大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(う)1739号 判決

被告人 福原裕

〔抄 録〕

すなわち、原判決は、被告人が原審相被告人金子春男ほか二名と共謀のうえ、トルエンを(一)販売し、(二)販売の目的で貯蔵したと共同正犯の事実を認定しながら、右事実に対し法令を適用するに当たり、毒物及び劇物取締法三条三項、二四条一号、毒物及び劇物指定令二条七六の二の規定を摘示したのみで、刑法六〇条の適用を遺脱した。而して、共同正犯と単独犯とは構成要件的評価を異にするのみならず、本件、とりわけ原判示第一の(一)は、原審で取調べた関係各証拠によれば、被告人とその妻福原八重子、原審相被告人金子春男とその妻金子花子が、被告人において原審相被告人星金治郎から仕入れたトルエンを原判示の金子方に貯蔵し、右金子夫婦において同所でこのトルエンを第三者に販売することを謀議してなした所謂共謀共同正犯の事案であることが明らかである。かかる場合、実行行為者ではなく謀議者たる地位にとどまる被告人に対し刑事責任を問擬すべき法律上の根拠は刑法六〇条の規定にほかならない。すなわち、本件においては、刑法六〇条は判決主文の判断に至った根拠を理由づける規定であると解すべきである。したがって、原判決における刑法六〇条の適用の遺脱は、法令適用の誤り、しかも判決に影響を及ぼすこと明らかな法令適用の誤りといわざるを得ない。右の点において、原判決中、被告人に関する部分は全部破棄を免れない。

(相澤 大前 油田)

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